蕁麻疹(じんましん)について

2022年05月01日

全身のあちこちにかゆみのある赤みやむくみが出たり消えたりする場合、「蕁麻疹」を疑います。

症  状: 蕁麻疹の症状は皮膚に小さなふくらみが出来、それが蚊に刺されたときのような形に広がっていき、強いかゆみを伴います。通常これらの症状は数時間以内に消え、しばらくしてまたかゆくなり、同じような発疹が出てくることを繰り返します。症状が急激で強い場合は呼吸困難やショックを起こすこともあります。

蕁麻疹にはいくつかの種類があります。多くが通常の蕁麻疹で、急性型と慢性型に分けられます。そのほかに特殊なタイプとして物理的刺激により誘発される物理性蕁麻疹、特定のものに触れると出る接触蕁麻疹、くちびるなどが急に腫れる血管性浮腫などがあります。

発生機序: これらの蕁麻疹はどのようにして起こるのでしょうか。我々の皮膚の中には蕁麻疹を引き起こす「ヒスタミン」という物質を蓄えている肥満細胞という細胞が存在します。蕁麻疹の原因となる何らかの刺激を受けると肥満細胞からヒスタミンが放出されます。このヒスタミンは知覚神経に作用してかゆみを生じさせます。さらにヒスタミンは血管を拡張し皮膚が赤くなり、血液成分が漏出して膨疹といわれる皮膚の腫れが出現します。これが蕁麻疹の発生機序です。

原  因: 蕁麻疹と聞くとすぐに内臓が悪いのではないかと思われる方が多いようですが、実際には内臓に病気があることはほとんどありません。蕁麻疹患者さんの7割以上が原因不明といわれています。原因があきらかなものとしては抗生物質や鎮痛剤などの薬剤、魚介類や乳製品などの食品、感染症などの基礎疾患、運動・発汗・圧迫などの物理的刺激などがあります。

悪化因子: 蕁麻疹を悪化させる因子として疲労・ストレス、熱い風呂や激しい運動などによる温熱、解熱鎮痛薬などの薬剤、サバ・マグロなどのヒスタミンを多く含む食品、防腐剤などの添加物などがあります。

治  療: さて治療法ですが、まず原因となる刺激がわかっている場合はそれを避けることが最も重要です。ただしほとんどの蕁麻疹は原因がわからないため、薬による治療が必要となります。治療薬は第一にヒスタミンを抑える抗ヒスタミン剤を内服します。種々の抗ヒスタミン剤で治まらない場合や重症の場合はステロイドを内服する場合があります。
治療中の心がけとして、一般的に蕁麻疹を悪化させる因子は避けるようにしてください。また日常生活の中で悪化因子をみつけるように心掛け、気付いた時はそれを避けることが大切です。蕁麻疹の内服薬は長期間服用する場合があります。自己判断で薬の量を調節すると治療効果が落ちますので、医師の指示通りきちんと内服しましょう。また抗ヒスタミ剤は眠気を伴うものが多いので、自動車の運転や危険な作業にたずさわる場合は注意が必要です。眠気が強すぎる場合は医師に相談すると良いでしょう。

蕁麻疹、特に慢性蕁麻疹は難治性で厄介な病気ですが、決して治らない病気ではありません。専門医を受診し、適切な治療により多くの場合は軽快していきますので根気良く治療を続けてください。